前回フォントのことしか書かなかったので好きな句など・・・。
小津夜景『フラワーズ・カンフー』(ふらんす堂)より
黴のパンあるいはパンセ風に寄す
大伽藍くぐらんごとく読みはじむ
うたかたと鷽の古式なかくれんぼ
フイルムは深き眠りに降る砂か
くらげらの声をひかりは書きしるす
冬といふしなやかな字を忘れもし
ぬつ殺しあつて死合はせ委員会
ゆけむりの人らと少しかにばりぬ
あけぼのよとろんぼおんの肺に満ち
くらげみな廃墟とならむ夢のあと短歌あり、散文ありの構成で、よくある句集のつくりとは違う。
句は破調や字余り等少なく、端正なリズムが続く。
作者の興味範囲の広さか、様々なジャンル出自の言葉がちりばめられているが、それぞれの元の世界はさほど引き摺っていないように感じた。
定型の器と、言葉だけがさらりと存在し心地良い。
散文に、ふなっしーみたいなのが出てきて楽しい。
関西は今日の風が春一番だったらしい。
強烈。
テーマ : 俳句
ジャンル : 小説・文学